大師さまと鳩(はと)の子
「大師さまと鳩(はと)の子」
ある時のこと、大師さまが日積の中山の里をお通りになった。
深山(みやま)〔的場(まとば)〕にさしかかられると、さても不思議なことに、山の上から数多くの鳩の子が舞い下りてきた。
そして、大師さまのそでを口ばしでくわえて山頂へと案内した。
その後、鳩の子はそのまま空へ舞い上がって、仏さまの姿になった。
あたりには不思議な香りがただよい、音楽が流れ、その中を三体の仏さまはあかね色に染まる西の山へ沈んでいかれた。
一夜を山頂で明かされた大師さまは、里に下りて村人に話された。
「ここは景色といい、きのうのことといい、たいへんありがたいお山だ。末長く、み仏をお祭りするべきだと思うが。」
村人はこの話を聞き、感動して力を合わせてお堂を建てた。
鳩の子に導かれたことにちなんで、「鳩子山峰の坊」と名づけられた。
峰の坊は、今の十楽寺の開基と言われている。
(「中山地区の昔ばなし」より)