人生案内

「人生案内」読売新聞20190824より転記しました。

〈問い合わせ〉60代後半の主婦。もう人生後半を迎えているのですが、自分がいまだに何もわかっていないことに今更気づいてショックを受けています。これまで私は長いこと生きてきたと思っています。それなのに、大好きな花のことも、歴史のことも、政治経済や世界のことも、何もかも、漠然としか知りません。そして、知らないということに気づいた後から、学びたい、知りたいという欲求が日ごとに増してきています。私は高校までしか出ていないため、どうやって学んでいいのかわかりません。幅広い、いろんな事柄について、もっと深く知る人間になりたいのです。そうはいっても、なかなか勉強をする手だてがありません。学びたいと思っていても、今はどうしたらいいのか、迷ってばかりいます。どのようにしたら世の中のことをもっとわかるのでしょう。いろんなことを知っていくために何をしていけばいいのか、教えて下さい。〈兵庫・H子〉

〈回答〉知りたい、学びたい。そう思った時が勉強のチャンスです。先生は必要ありません。本と新聞が先生です。電子書籍ではなく、紙の本と新聞を選びます。学ぶ手段は消えてしまうものでなく、確かな手応えの感じられる印刷物が安心です。学習したという実感を得られます。好きな分野から始められます。その本を開きます。あなたはお花がお好きですね。花の本なら何でもよいのです。大抵の本には花の知識のほかに、花言葉や花の文学、花と人などの読み物があります。興味を覚えたものを見つけたら、次はその関係の本を探して読みます。 こんなふうに連鎖式に好奇心を満していく。これが勉強です。ルールはありません。誰でも一人で自由に学べます。本と新聞を読めば、ありとあらゆる学問ができます。あなたも必ずや良き師に巡り会えるはずです。師との出会いは年齢と無関係です。(作家 出久根達郎)

○「学ぶ心」
学ぶ心さえあれば、万物これわが師である。
語らぬ石、流れる雲、つまりはこの広い宇宙、この人間の広い歴史、どんなに小さい
ことにでも、どんなに古いことにでも宇宙の摂理、自然の理法がひそかに脈づいてい
るのである。そしてまた、人間の尊い知恵と体験がにじんでいるのである。これらの
すべてに学びたい。                    松下幸之助

「学校が変わる 学びが変わる